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 民法上、契約期間があっても賃借人から解約をする権利が留保されているときには、建物については解約の申し入れ後3カ月を経過したときに契約が終了すると定められています(柱2)。
この定めは解約権が留保されていない場合には解約はできないことが前提と読めます。
 土地賃貸借については判例があります。
裁判所は「賃貸借における期間の定めは、当事者において解約権留保の特約をした場合には、その留保をした当事者の利益のためになされたものということができるが、そうでない場合には、賃貸人、賃借人双方の利益のためになされたものというべきであって、期間の定めのある賃貸借については、解約権を留保していない当事者が期間内に一方的にした解約申し入れは、無効であって、賃貸借はそれにより終了することはない」としています(注3)。
定期借家法の定め 定期借家法は、特約がない場合の期間内解約について、転勤などのやむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難になったときに貸借人から解約ができると定めました(注4)。
この規定は特約がなくとも期間内解約ができる例外を定めたものです。
本来期間内解約はできないというのが原則であって、特約がない場合には期間内解約はできないと解釈をすることができます。
注1 :特約がなくても期間内解約ができるという説もあります(中田真之助「不況下の賃貸借契約」三省堂、 81-84頁)。
民法618条、 617条1項最高裁昭和48年10月12日判決(金融法務事情703号26頁)借地借家法38条5号期間内に解約になったときの損害賠償 期間内に解約になったときでも、期間満了までの賃料相当額を損害賠償額とするという損害賠償の予定条項や、期間内解約時の敷金・保証金の没収条項が有効なのであれば、収益安定に有利です。
損害賠償の予定 一般的に、損害賠償額を予定する特約は有効であって、裁判所はその額を増減することはできません(注1)。
しかし、その金額が暴利行為といえる場合には、公序良俗違反として、全部または一部が無効になります。
 期間内解約のとき、損害賠償の予定や敷金・保証金の没収条項の有効性について裁判所の判断は分かれています(図56)<判例①事案:期間を4年、 「賃借人が期間満了前に解約するときは、期間満了    までの賃料相当額を違約金として支払う」という特約のある契約    について、契約開始から10カ月後に解約になりました。
 裁判所の判断(注2) : 3年2カ月分になる違約金は金額が高額であるう    え、賃借人の明け渡し後数カ月程度で新たな賃借人が確保されて    いることを考慮すると、特約をそのまま認めることは公序良俗違    反になるとして、違約金として1年分の賃料相当額までは認めた    ものの、 1年分の賃料相当額を超える部分を無効としました。
②事案:期間を10年、敷金132万円(月額賃料22万円の6カ月分)を預け    入れ、この敷金について、 「3年以内に賃借人が解約したときに    は敷金を返還しない」という契約で、契約開始から10カ月後に合    意解除になりました。
 裁判所の判断(注3) :不返還特約を損害賠償の予定として、特約を有効と    しました。
③事案:期間を15年、敷金名義で1500万円(月額賃料130万円の11.5カ月    分)を預け入れ、この敷金について「貸借人が契約期間内に解約    を申し入れた際、契約後10年以内であれば全額、 10年を越え15年    までであれば半額を賃貸人が取得する」という特約のある契約に    ついて、契約開始から6カ月で解約になりました。
 裁判所の判断(注4) :敷金を保証金と認定し、この保証金額は不当に高額    とはいえず、保証金を没収するとの特約は賃借人が自由な意思に    基づいて締結したもので、一方的に不利益とはいえない、として、    特約を有効としました。
まとめ 判例(彰は賃料の6カ月分、判例③は賃料の11.5カ月分の没収特約をそのまま有効とし、他方判例(勤は38カ月分になる違約金のうち、 12カ月分だけを有効として、あとの26カ月分は無効にしました。
 この3つの判決からは、損害賠償の予定や敷金・保証金の没収条項について、効力は肯定しながらも、どんな場合でも有効というわけではなく、12カ月分程度の損害賠償や没収は有効だが、これを越えると無効になる、という判断をしているように読みとれます。
注1民法420条1項注2東京地裁平成8年8月22日判決(判例タイムズ933号155頁)注3東京地裁昭和50年1月29日判決(判例時報785号89頁)注4浦和地裁昭和59年1月31日判決(判例タイムズ527号126頁)第6章 安定収入確保のための法的問題空室保証の特約 賃貸借契約において、契約期間内に賃貸借が終了するときには、賃借人は次の賃借人が入居するまでの間の賃料を保証するという特約が結ばれることがあります。
この特約が有効であれば、期間内解約があっても賃料収入が確保されることになります。
しかし、裁判所の判断としては、この特約の有効性を肯定するものと否定するものがあります(図57)。
①肯定判例 事案:期間内解約のときには、賃借人は次の賃借人が入居するまでの間    の空室期間中月額30万円の賃料を支払うという特約がなされ、空    室期間が1年8カ月に達しました。
 裁判所の判断(注1) :空室保証について、約定期間中に解除された場合に    は賃貸人が賃料収入を得られないことによって受ける損失を貸借    人が填補する約定であって、賃貸人は期間の拘束をうける反面、    期間中の賃料収入の期待権を有するのだから、空室保証は公序良    俗に反しないし、権利の濫用にもあたらないとして、特約の効力    を認めました。
②否定判例 事案:新たな賃借人が入居するまで、従前と同額の賃料を支払うという    特約がある契約が、期間内に合意解除された場合に、空室期間中    の賃料を請求できるかどうかが争われました。
 裁判所の判断(注2) :このような特約がある場合でも、旧賃借人が支払う    べき賃料は、実際に次の賃借人が入居するまでではなく、通常新    たな賃借人が入居する期間、すなわち3カ月分に限定するのが公    平だと判断しました。
裁判所の考え方 空室保証特約について、全面的に有効と認めた判例①と、 3カ月分だけを有効と認めた判例②とは、違った立場にたっています。
 ところで具体的な事案をみると、いずれの判例も空室保証のほかに保証金の償却も争点になりました。
そして保証金の償却について、判例①では、期間内に契約が終了した場合、償却できるのは約定期間と賃貸借終了までの期間との比率に応じた金額だけで、約定償却額の全額ではないと判断されます。
判例②では、使用期間に関係なく、約定の保証金償却ができる、と判断されました。
この保証金の償却についての判断は、判例①について賃借人に有利、判例②について賃貸人に有利な結論です。
 空室保証については、判例①が賃貸人に有利、判例②が賃借人に有利になる結論になっていることを考え併せると、裁判所は具体的事情に応じたバランス感覚のある判断をしているといえます。
しかし、具体的事情に応じた判断は、予測可能性を損ないます。
事業としての安定収入確保の観点からは問題が残されていました。
注1 :東京地裁昭和45年2月10日判決(判例時報603号62頁)注2 :東京地裁昭和50年10月28日判決(判例タイムズ334号247頁)賃料の意味 賃料は建物使用収益の対価です。
しかし、どのコストと対価関係にある とみるかにより、賃料は2つの意味に使われます。
 賃貸のコストは建物本体を取得・維持するためのコストと、建物の保守管理、税金、保険料といった日常的な出費のコストに分かれます。

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